2.定期検診(検査)

2―1.定期検診(検査)の目的が不明確

●駆け込み型受診から定期検診型受診へ

近年、「定期検診」に対する社会的な認知度が高まり、痛くなった時だけ歯科医院に駆け込むという「駆け込み型受診」から、「定期検診型受診」へと患者さんの意識が変わってきました。このような歯科意識の変化は歯科後進国であった日本も、ようやく文明国としての歯科文化が根付き始めたといえます。

●現状の定期検診は限界あり

しかし、現状の「定期検診」は検診目的や検査レベルが曖昧な状態で実施されているため受診者の期待に反して多くの問題が生じています。特に免疫力の低下している中高年の歯周病に対して細菌検査を行わず、平面レントゲンと視覚による検査では正確な診断を行うことは困難です。

この結果、「2−3,定期検査の実態」に示すような弊害が生じています。このようなことが生じないためには、「検査モデル」に応じた適切な検査項目を選択すると共に「検査基準の規格化・標準化作業」が必要です。一方、定期検査の利用者に対しては「検診の品質が担保」されなければなりません。もっとも現状の保険制度下では実行困難です。

2―2.歯科定期検査は人間ドックの歯科版ではない

一般には医科の人間ドック歯科版のように思われていますがコスト面から考えても同様な期待が困難であることは自明です。つまり、一般的な早期発見のレベルとは現在の「保険診療の枠内における診断技術の水準」によって行なわれています。高水準の診断を求める方は別枠の高精度の診断技術による検査が必要です。

2―3.定期検査さえ受けておけば安心は疑問

現状の定期検査は医院側も患者さんもデンタルチエック程度の軽い気持で対応しており「定期検査」の重要性に対する緊張がみられないことです。さらに、過当競争にさらされた医院の経営手段の一つとして患者さんの囲い込みを行なっているだけではないか、と思わせるような粗雑な内容もあります。中高年の方が現状の定期検査で異常がなし、と判断されても異常を感じられる場合はためらうことなく正確な診断を求める必要があります。

2―4.定期検査の実態

さて、以下に示す症例は中高年の方が定期検査を受け続けて安心されていた結果です。これら近年、FDCに転医された方に例外なくみられる症例です。

Photo−1 定期検査の結果

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患者さんは「歯周病では歯を失いたくない」ので定期検診に通院していたはずです。また、定期検査の目的も患者さんの検診目的と一致していたはずである。なぜ、このような結果になったのでしょう?
*検査項目の不足 FDCの細菌検査の結果5.位相差顕微鏡検査の世界(歯周病)

Photo−2 ブラッシングのチェックがされていない定期検診

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ブラッシングで歯周病が予防できる、と指導され1日3回実践した結果である。歯周病は改善せず歯の摩耗が進み、歯の周囲の歯肉も傷ついている。水がしみ、ブラシが当たると痛いため当院へ転医。
一体、毎回の検診では何をチェックしていたのであろうか?

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 「ブラッシング教」信者の症例

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Xray−1.
 ブラッシングによる歯の摩耗

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ブラッシングで歯周病は治ると指導され、動く歯を指で支えながらブラッシングを行ない定期的に受診。しかし、うがいの水もすごくしみ、歯の動揺のため咀嚼困難となりFDCを受診。

Phot―3.、Xray―1.からブラッシングによる歯の摩耗(黄矢印)が確認できる。 しかし、このような熱心な努力にもかかわらず現実には歯頸部から膿は漏出。 CT撮影を含めた総合診断の結果、治療方針は上顎5歯の抜歯。
この症例も「ブラッシング教」信者の悲劇といえる。

自明のことであるが補助手段のブラッシングによって症状は一時的に改善するが
「歯周病が治癒」することはない。

定期ブラッシング講習会の成果!

Photo―4

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Photo―5

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予防に熱心な先生と歯科衛生士さんと思い定期検査も受診し信頼しきっておられたようです。この種の講習会には必ず歯のよいサクラの患者さんがいて、会の雰囲気でマインドコントロールされ自分もよい歯になっていると思い込まされます。さらに、このような歯の状態にかかわらず、この患者さんを医院の模範患者です、とは!まるで悪質なカルト宗教のようです。イメージだけでの医院選びはリスクが伴う例です。

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簡便で低廉な検査ですから、このような結果もやむえないでしょうが、歯の弱い方には不幸な結果となっています。専門職として、またかかりつけ医ですから患者さんの信頼をうけている以上、もう少しなんとかならなかったのだろうかと思います。


2−5.定期検査の問題点

現在、転院されてくる手遅れの患者さんを診ていますと日常的に行なわれている定期検査の在り方に多大な疑問を感じます。同様にブラッシング指導についても熱心な指導はよいとしても指導効果の検証がされていないために患者さんの歯の摩耗が多々みられます。

一方、患者さんの方ではこの検査や指導を極めて重視しており、この検査や指導でパスすれば問題なし、と考えているようです。

しかし、現状の検査は極めて短い時間での感覚検査、あるいは平面レントゲンによる診断が行われているにすぎません。

このような「細菌検査」を抜きにして感覚検査や経験則による検査法だけでは患者さんが期待されている歯科疾患の早期発見や異常の検出は困難です。

U.高精度の定期検査

1.ミクロのむし歯や修復物破損の発見

歯の弱い人や中高年の方には肉眼による視覚検査では、いかに不十分であるかを指摘しました。心眼をもっている歯科医は別として微細なむし歯や下側歯頸部などの発見困難な場所にできるむし歯はCCDカメラとレーザースキャナーが必ず必要です。また冠や充填物の微細な破損やひび割れも見逃しませんので脱落や痛みが生じる前に処置が可能となり本当の意味での定期検査といえます。

2.細菌検査なくして歯周病検査なし

歯周病で出血を伴う場合、必ず細菌の存在が考えられます。 また症状が軽度であっても細菌検査を実施することにより正確な病状把握ができ、病状の進行を防ぐことができます。

3.平面レントゲンは診断に限界あり

通常の平面レントゲンの画像情報では歯槽骨の病的破壊が立体的にとらえることは困難です。ガンなどの悪性腫瘍はもちろん、歯周病や根先性歯周組織炎(歯根の先にできる病気)あるいは親知らずなど 歯槽骨に病状が及ぶ場合、CT撮影により信頼性の高い診断をくだすことができます。中高年の歯周病にはCT撮影を行っておけば、思わぬ多数の抜歯を宣告され慌てることはないでしょう。

また、歯周病だけでなく顎関節症においても正確な診断ができます。

以上、高精度検査の必要性について一部をご紹介致しましたが、これ以外にも先端の精密医用電子機器により従来の定期検査では発見出来なかった症状が検出できます。