FDC式「う歯」(むし歯)治療

―最初の「う歯」治療が、その後の歯の運命をきめるー

1.はじめに

以下の知識なくして「う歯」(むし歯)の治療を語るは机上の空論

  1. 白い歯は「丈夫な歯」を意味しない。
  2.  「丈夫な歯」とは歯の内部構造(象牙質)が優れ、免疫機能の強い歯のこと。
  3. 歯は平等につくられていない。
  4.  歯は平等につくられておらず、強い歯も次の理由で劣化する。
  5.  加齢、長期の内服薬の影響、あるいは諸臓器の病的変化などによって歯の内部構造や
  6.  象牙細管/歯髄複合体(dentin/pulp-complex)の免疫機能は劣化する。
  7. 「う歯」治療は病巣部の病的組織を除去し、原因菌を除菌することです。
  8. 充填などの「修復行為」は治療には含まれない。
  9. 「う歯」とはC1〜C3までのエナメル質、象牙質の感染状態。
  10.  注)C3で歯髄を除去するような病状はPul(歯髄炎)

1.人によって歯の「内部構造」と「機能」に優劣がある

同程度の「う歯」の治療で異なる治療結果が生じるのは下記の要因によるものです。

1)象牙細管の構造と走行パターンの違い(A,B,C)

Phot―1.
つよい歯の象牙細管(A構造)

つよい歯の象牙細管は高密度で規則的な配列をなし、管径も揃っている。

Phot―2.
弱い構造(B)の象牙細管

細管密度が粗く、サイズも規則性が低い、また細管分布の状態もバラツキがある。青色部に細菌侵襲がみられる。

2)象牙細管./歯髄複合体の免疫能力の優劣(A,B,C)

Video―3.
低免疫力象牙細管への細菌侵入(例1)

【Phot―1】に見られるようなA構造(強靱)の象牙質であっても糖尿病などの持病がある場合は「象牙細管./歯髄複合体の免疫力が低下」するため細管に細菌の侵入(黄色の矢印)がみられます。同様な状態は一部の降圧剤を服用しているケースにも観察されます。

Video―4.1.
低低免疫力象牙細管への細菌侵入(例2)

注意して見ると矢印の細管内に繋がった球菌の存在が観察される。

Video―4.2.
低低免疫力象牙細管への細菌侵入(例2)

細菌は上記の矢印細管内だけでなく検体象牙質の蛍光反応(青色)が示すように広範囲の象牙細管に細菌の侵入が観察される。

3)病巣部病原菌の生残能力

―多種類の耐性菌は飲食物から口腔内にもたらされるー

「う歯」の病巣部には抗菌剤だけでなく歯科薬剤耐性菌も存在します。それだけでなく意外なことに耐塩素性細菌やpH12以上の強アルカリ性環境に耐える細菌も存在します。

これらの種々の耐性菌(歯科薬剤耐性菌を含む)は院内感染だけでなく,ほとんど知られていませんが【飲食物】、すなわち農薬や抗菌剤などに汚染された牛、豚や家禽類、さらに魚、野菜などからも口腔内にもたらされます。

このことは,公表されている農水省の抗菌剤使用リストをみれば医療と比較しますと医療外(家畜・家禽類や野菜や果実、さらに養殖魚)に使用されている大量の抗菌剤の使用が記載されています。抗菌剤でなくとも農薬に耐えた細菌が種々の歯科用薬物で簡単に死滅しないのは当然といえます。
口腔内の細菌はどこから来るのか?

家畜・家禽類からの耐性菌の危険性は欧米では常識となっており、文明国?で知らないのは日本人(医療関係者を含む)だけというお粗末さです。歯科の文献だけで議論するのではなく海外の医学、食品科学の文献を検索する必要があります。

―「う歯」は混合感染症―

「う歯」病巣を毎回、位相差顕微鏡で観察していますとミュータント菌や乳酸桿などの特定の細菌だけでなく多種多様な細菌の存在を確認することができます。永年の観察から「う歯」は各種の細菌が相互にかかわる【混合感染症】であることを実感させられます。

―細菌の生残能力分類は【除菌工程数】と【除菌時間】から総合的に判断―

FDCは病巣部細菌の【生残能力分類】は臨床条件下で効率的に「う歯」病巣の除菌を行なう、という目的から【各除菌術式の工程数】と【除菌時間】から総合的に判断しています。

  1. 【生残能力分類】
  2. 生残能力   除菌工程 除菌時間(秒)
  3. A群(弱)・・・・・1工程(60秒未満)
  4. B群(普通)・・・2工程(60秒以上〜180秒未満)
  5. C群(強)・・・・3工程以上(180秒以上)

2.定型治療でトラブルの生じる歯、生じない歯

「う歯」治療の成績は象牙細管の
@構造、A免疫性、B侵襲細菌の生残性の強弱などの3要素によって決る。

*現行の保険制度では「う歯」程度の治療であれば、これらの判別をする【検査項目】は採用されていない。

2.1 3A(A,A,A)〜(B,B,A)の範囲の「う歯」は「定型治療」でもあまり問題が生じない。

しかし、上の例も下記のような状況、特に(A、C、C)に変化しているにもかかわらず「定型治療」で済ませると意外なトラブルに悩まされます。

  1. 1)抜髄をした場合・・・→(A、C、A)
  2. 2)生残性の強い細菌が侵襲した場合・・・→(A、C、C
  3.  注)「う歯」が中程度から重度(C2~C3)の病巣部に細菌(C)が含まれている場合

2.2 3C(C,C,C)の歯は「定型治療」後にトラブルが生じやすい。

象牙細管の@構造(C)、A免疫性に劣る(C)の歯が「う歯」になった場合は、
侵襲する細菌の種類によってトラブルの程度が異なります。

特に「う歯」が中程度から重度(C2~C3)の病巣部に
生残性の強い細菌(C)が含まれている場合は適切な除菌処置が実施されないと
短期間でトラブルが生じやすくなります。

2.「う歯」の保険治療と高規格治療(自費)の違い

「う歯」の最初の治療が、その後の歯の運命をきめます。

以下に述べる「う歯」の治療対象はC1〜C3までの一部性歯髄炎の伴わない「う歯」の病態です。

1.保険治療

療養担当規則に従った保険治療は4工程です。なお、Dの充填などの行為は「修復処置」ですので治療に該当しません。

保険治療の概要

  1. @症状の問診
  2. A温度診、感覚検査
  3. Bレントゲン検査
  4. C病巣部の除去、消毒
      注)通法の「う歯」消毒法では薬剤耐性菌、農薬耐性菌は死滅しない。
  5. D保険用材料による修復
      4A〜4Bまでの歯質の患者さまは保険治療でも可
      注)金属アレルギー、レジンアレルギーの方は保険材料で
        問題を生じることがありますので、事前にご相談ください。

注)C2(軽度)の「う歯」治療は1〜2回で完了、例外的に1ヶ月後に1〜2回の治療で完了

2.高規格治療(自費)

  1. 1)FDC式の「う歯」高規格治療は患者さまの歯質、病巣部の細菌に
      対応することが可能なオーダーメイド治療です。
  2. 2)臨床工学機器や細菌検査によって診断精度を向上させています。
  3. 3)治療品質の向上のために生物工学、量子生物学などの最新バイオテクノロジーを
      臨床に技術移転しています。
  4. 4)象牙質、歯髄組織のダメージをレーザー照射により改善します。

FDC式高規格治療の概要

  1. 1)症状の問診
  2. 2)温度診、感覚検査
  3. 3)レーザー検査による「病巣部位と「う歯」深度」の正確な検出
  4. 4)レントゲン検査
  5. 5)画像拡大システムによる病巣部の精密検査
  6. 6)位相差顕微鏡による病巣部の細菌検査
  7. 7)位相差顕微鏡による象牙細管構造と細菌侵入状況の検査
  8. 8)象牙質内の残存菌に対するFDC開発の
  9.   注)オゾンMFBはバブル破壊時のエネルギーが弱いため通性嫌気性菌、
        好気性菌などの除菌には力不足
  10. 9)量子生物学に基づくレーザー照射による歯髄/免疫システムの改善
  11. 10)軽度な歯痛などの状態が長くつづく場合は「経絡調整」を行ないます。
  12. 11)レーザー光の1,000度の高温によりフッ素を歯のエナメル質に溶融させ
      歯を強化致します。

歯を大切にする方のために開発された最新の治療システムです。

歯の弱い患者さまを悩ませている修復後に発生する
 「歯内部に発生する二次カリエス」の再発を予防します。

3.安全性の高い歯科材料による修復処置(自費)

いかに良い治療をしていても諸臓器に対するリスクや材料の経年劣化が早期に
顕われるような修復物では、繰り返し治療につながります。

FDCの修復材料は上述の歯科的な条件にとどまらず頭頸部疾患の際の
CTMRIへのアーチファクト、あるいは脳磁計(MEG)や
心磁図検査などに影響のない素材が選ばれています。

以上が「う歯」に対する高規格治療の考え方です。

3.FDC式「う歯」治療の実際

3−1.問診

1)来院までの経緯

47才(女性)、充填物の歯が痛むため2ヶ所の医院を受診するが、いずれの医院も一時的な症状として数回の処置で治療完了、やはり痛みが気になるために当院に転医したもの。

2)問診の重要性

症状について具体的に現在の症状や今で経過について詳しく問診致します。次に既往歴や家庭、あるいは職場での心身の疲労状態などをお聞きします。簡単な「むし歯」の治療であっても転医を繰り返す方については、これらの情報を詳細に掌握していますと正確な診断が行えるだけでなく治療経過や予後についてもあらかじめ予測可能となります。

注)心身が疲労状態であれば歯の症状は強く顕われます。理由は「心身」が主(上位)で
  歯が末(下位)だからです。このような心身状態の患者さんは治癒状態も悪く、
  治療期間も長引く傾向があります。

3―2.むし歯の痛む原因を捜す

1).視覚検査

さて、問題の「むし歯」の原因を捜すために基本検査の視診「Photo−3」やレントゲン検査
「Photo−4」を行ないます。

Photo−3.視覚検査
(肉眼でみた歯のサイズ)

修復後7年経過するが変色、破折などはみられず、CCD画像支援システムによる拡大画像からも異常は認められない。

Photo−4.第2大臼歯レントゲン画像

レントゲン画像(Photo−4)からは第2大臼歯の充填物周囲には明瞭な「むし歯」の影が認められない。しかし、黄色矢印の部位に第3次象牙質の形成が認められます。この変化像から歯髄の持続的で緩慢な炎症反応が推定されます。

2).しばらく様子をみるか、思い切って充填物を除去するか

症状は軽微、しかも充填物の辺縁封鎖は完全です。しかし、レントゲンの画像情報からは軽度の「むし歯」の存在が疑われる程度です。これでは前医2名が金インレーを除去せず要観察の判断も無理からぬ事です。しかし、これでは痛みの原因が不明のままになります。原因を解明するためには金インレーを除去する必要がありますが決断すべき決定的な根拠が不足しています。これが今までの検査法の限界です。

3―3.レーザー利用による新しい「むし歯」の検査法

そこで問題の歯の周囲をレーザー光で走査(スキャンニング)させることにより象牙質の微細な崩壊部やクラック(ひび割れ)を検査致します。その結果、充填物の下方に深い「むし歯」を示す「99」(Photo−5)の数字が表示されました。レントゲンの推定位置と合致しますので充填物を除去します。従来の検査法では、このような充填物直下の微細な「むし歯」やクラックを検出することは困難でした。

Photo−5.
検査値99を示す

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ダイアグノデント「KaVo社製・(ドイツ)」
この検査機器によって患者さんの早期病状が確認され、以後の処置により症状が解消されました。早期受診にもかかわらず検出技術のレベルが低ければ病状進展による強い痛みが生じてから治療を開始するということになります。
「う歯」の早期発見はミクロサイズの検出レベルを向上させることによって実現します。

3―4.金インレー除去後の「むし歯」の状態

金インレー除去後、CCD画像支援装置により病巣部を拡大すると「むし歯」のコロニーを確認(矢印)することができます。画像精査の結果、充填物の辺縁封鎖が十分におこなわれており、接着剤の付着状況ならびにコロニーの分布状態から、この「むし歯」の原因は外部からの感染ではなく形成時の残存細菌によるもの、と考えられます。(Photo−6.)

Photo−6.
金インレー除去後の「むし歯」の状態

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残存細菌によって形成されたコロニー(矢印)

3―5.位相差顕微鏡による細菌検査

病巣部に多種類の細菌活動を認める。FDC「病原菌除菌マニュアル」に従い、多様な制圧法を適用し、制圧(殺滅・除去)します。病巣部は密閉された空間であっても多様な細菌が存在する以上、偏性嫌気性菌だけでなく通性嫌気性菌や好気性菌の制圧も必要です。

Video−1.
軟化牙質徹底的除去後の生残菌

「軟化牙質(病的組織)」の徹底的な除去後も細菌は大量に存在している。位相差顕微鏡の世界・「むし歯」
機械的な清掃だけでは細菌を十分に除去できず、病巣の細菌が除菌されていなければ感染症治療とはいえない。

3―6.細菌の制圧(溶菌・除去)と確認

Video 2.病巣部生残菌の除菌

細菌活動は停止し、
形態の変形、あるいは溶菌がみられる。
除菌はUFBテクノロジーを応用します。 細菌の耐性度により除菌回数は変わります。
注)UFBテクノロジーによる除菌は自由診療
細菌耐性度・・・細菌が化学的、あるいは熱、または物理的な衝撃に耐える能力

Video 3.除菌後の処置

除菌後、細菌の死骸を洗浄、除去します。さらに細菌毒素の影響が【象牙細管./歯髄複合体】に及んでいるため【YAGレーザー照射】により【毒性物質の蒸散】と細管システムに対して【量子生物学的】な治癒促進をはかります。

3―6.象牙質―歯髄複合体(Pulp-Dentin Complex)の治癒促進

病巣部のUFB除菌に成功すれば細菌毒素の産生がストップします。その結果、「象牙質/歯髄複合体(Pulp-Dentin Complex)」に対する刺激は減少し、痛みは消失します。

【C3(重度)】の「う歯」に対してレーザー治療や「経絡調整」は「象牙質/歯髄複合体」に対する強い消炎効果がありますので従来の【覆髄処置】と比較すると抜髄処置(歯髄除去)が減少します。

3―7.「むし歯」治療の完了条件

FDCの「う歯」治療は症状消失だけでは治療完了とみなしていません。 簡単な「う歯(C1.C2)」であっても再治療のリスク低下のためには以下の2処置を適確に行なうことが治療完了の条件であると考えています。

  1. 1.病巣部の徹底的な除菌
  2. 2.象牙質/歯髄複合体に対する消炎処置

「う歯」治療は簡単な充填処置ではなく「感染症治療」です。

4.診療支援システム

4ー1.診療支援システム

「う歯」に対して精度の高い治療を実施するためにはまず3つの医療情報が必要です。最初に肉眼では識別が困難な「う歯」部位の早期発見に必要な「歯質破壊度情報」、次に病的組織を十分に観察することが可能な「画像情報」、最後にもっとも重要な病巣に存在する「細菌情報」です。

診療支援システムから提供された多様な情報を統合化することによって感染症治療に必要な高精度の診断とタイムリーで適切な治療の一体化が可能になります。

  • ダイアグノデント・・・・
    →むし歯、あるいは歯の微細なクラックを検出する

  • 画像支援システム・・・・
    →病巣部を大きく見やすくする

  • 位相差顕微鏡・・・・・
    →見えない細菌を可視化する

(1)むし歯の検出と可視化

経験による感覚検査よりもレーザー検査法の優れている点については【3.FDC式「むし歯」治療の流れ】において既に述べています。以下に示します画像は他院で処置の必要なし、要観察と言い渡された症例ですが【診療支援システム】により病巣を検出、手遅れにならずに治療された症例です。いずれの症例もレーザー検査法【ダイアグノデント】と【画像支援システム】の拡大画像により病巣を容易にまた、短時間で確認しています

Photo−7 充填物の除去前

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拡大画像からは異常が見られず、ダイアグノデント検査値(94)により「むし歯」の疑い濃厚

Photo−8 除去後の病巣部

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充填物の除去後、接着剤の下に広範囲の「むし歯」を確認

Photo−9.充填物下の微細なマイクロクラック

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2歯科医院を受診するも痛みの原因不明。ダイアグノデントのスキャンによって特定部位に異常値を示す。充填物を除去後、拡大画像からのマイクロ・クラック(矢印)を発見。咬合時の痛みの原因は微細なひびにもかかわらず歯髄部付近に達していたため生じたものである。

以下はレーザースキャナー「むし歯」検出システムの機能。

  • ●充填物の下や冠の内側の隠れた「むし歯」の検出
  • ●発見困難なマイクロカリエスの検出
  • ●歯の微細なひび割れを検出
  • ●「むし歯」の進行度がわかる
  • ●X線被曝量を低減することができる

(2)見えない細菌を見る・・・・・→位相差顕微鏡(細菌データベース内蔵型)

5.位相差顕微鏡の世界