1.FDCの治療原理

はじめに

FDCの「治療理論と技術」は最新の【東洋医学】+【生物物理学】によって構成されています。

この治療システムは【高精度の診断】と【高信頼性の治療技術】を希望される方のために40年間にわたる臨床経験を通じて研究、開発されたものです。

「う歯」や歯周病は【複雑な病気】であり、単純な治療仮説や技能だけでは治療困難です。

 さて、最初に治療成績を左右させる重要な原理を紹介しておきましょう。

     上位の諸臓器は下位の組織(歯、歯周組織)を支配する。

1.諸臓器による支配.

身体を構成し、機能を維持するためには心臓などの循環器系をはじめ、肺や肝臓、あるいは腎臓など諸臓器が存在します。歯や歯周組織はこれらの諸臓器から酸素や栄養が順調に送られ、一方、代謝産物や炎症生産物は血液によって送り返され解毒されます。

このように常に「上位の諸臓器」は「下位の歯や歯周組織」を支配しています。

1)諸臓器の病気による影響

「上位の諸臓器」に病気が生じますと、血液を介して「下位の臓器」である歯や歯周組織の症状に影響を及ぼすだけでなく、 「う歯」や歯周病の炎症に対する解毒機能も低下します。 糖尿病、腎臓病や肝臓病だけでなく循環器系やガンなど多くの病気は「う歯」や歯周病の症状や治癒期間に影響を与えます。

身体を構成し、機能を維持するためには心臓などの循環器系をはじめ、肺や肝臓、あるいは腎臓など諸臓器が存在します。歯や歯周組織はこれらの諸臓器から酸素や栄養が順調に送られ、一方、代謝産物や炎症生産物は血液によって送り返され解毒されます。

このため「下位の歯や歯周組織」は常に「上位の諸臓器」に支配されています。

2.大脳による支配

職場や家庭、あるいは友人関係などのストレスにはじまり、経済的、あるいは将来に対する不安など私たちは常に人生における様々な精神的ストレスに囲まれて日々暮しています。このようなストレスは身体の免疫力を低下させ様々な諸臓器(歯や歯周組織も含む)に悪影響を与えます。

大脳は知的活動だけでなく身体機能に対する総合司令所でもありますのでストレスのために情報処理機能が混乱いたしますと諸臓器に不要なシグナルを送り込むため様々な不調や病気を生じさせます。(心身一如、あるいは病は気から)

また、ストレスによる全身的な免疫力の低下は「う歯」、歯周病などの感染疾患を生じやすくなり、治癒を困難にさせる場合が多いようです。

3.加齢による支配

私たちが最も認めたくない心身を支配する存在は「加齢」です。中高年になれば認めたくなくとも、これが最上位に位置します。表面的な元気さにかかわらず「加齢」により心身の劣化は進行いたします。歯に於いては咬耗症や「象牙質・歯髄複合体」の免疫力低下、歯周組織では「歯肉毛細血管梗塞や管壁の老化」などの様々な負の変化をもたらします。

このため、若いときとは比較にならない程、治療期間が長引き、治療効果も十分得られない場合も生じます。嫌なことかもしれませんが「加齢」の現実に向き合って迷信的な予防法でなく、効果的な予防技術を受入れる必要があります。

4.飲食による支配

いうまでもなく大脳をはじめ諸臓器、骨格や筋肉にいたるすべての人体の組織は飲食によってつくられています。飲食の「過不足」があれば身体に適切な栄養が供給されず諸臓器が不健康になり様々の病の原因になるのは当然です。(現代人は食べ過ぎ、運動でダイエットは間違い)

さらに、飲食に含まれている化学添加物や農薬だけでなく畜産、野菜や養殖魚に使用される抗菌剤に加えて、これによって生じた耐性菌なども身体に重要な影響を与えます。また、長期間、服用している薬も人体に同様な影響を与えます。これらの原因が難治性歯科疾患の一因になります。

日本人の体質に合わない西洋栄養学信仰の食事では、いくら運動をしていても老化は進み病気の種はつきません。例外的な人を除けば「う歯」や歯周病が悪化するのは謬った飲食によるものです。

 以上、述べたように多くの要因が下位に属する【歯の象牙細管/歯髄複合体】や歯周組織に様々な影響を与えています。

 永年の飲食の乱れによって生じる「う歯」や歯周病に定型的な治療や手術を繰り返しても歯が喪失するのは自明のことです。

5.FDC感染症治療の3原理

FDC感染症治療の3原理は以下の3つです。

  • 1.病的組織と炎症性産物の除去
  • 2.病原菌の除菌(殺滅)
  • 3.ダメージ組織の回復

5.1.病的組織と炎症性産物の除去

感染症治療は【除菌】と【壊死組織や炎症性産物の除去】を並行に処理します。 理由は感染病巣において高圧、高速の切削や回転機器を使用すれば、例え、慎重にこれらの器械を操作しても微細な病原菌の拡散を防止することは困難です。

そのため、二次感染防止のために「う歯】の切削時、あるいは歯周ポケットに対する処置の際は【壊死組織や炎症性産物に付着している病原菌】の除菌(殺滅)をしながら治療致します。

注)ミクロサイズの細菌の拡散をラバーダムだけで防止する事は困難

5.2 レーザーによるダメージ組織の回復

病源菌によってダメージをうけた【象牙細管・歯髄複合体】や【歯周組織】の回復はYAGレーザーの量子生物学的な作用により細胞レベルから回復させます。

6.FDC式除菌法

FDCでは歯科感染症において抗菌剤を使用する場合は例外的に重症な症例に限られます。一般的な「う歯」、歯周病の病原菌は別章で述べる化学的あるいは生物物理学的な方法によって除菌しています。

6.1.病巣部の「細菌情報」の収集

FDCの感染症治療は「細菌学的根拠」によって行なっています。適確な治療法をタイムリーに実施するためには位相差顕微鏡検査によるライブな「細菌情報」が不可欠です。この情報から細菌の生存環境や生態、あるいは各細菌の特性を掌握することが可能になります。

さらに精度の高い細菌情報を得るために位相差顕微鏡検査だけでなくグラム染色やDNA検査、あるいは多様な培地による培養検査なども実施しています。

6−2.細菌の生存環境を奪う

【細菌情報】から各細菌の特性を判別し生存環境を奪います。

@.細菌生存環境のガスやPHを変化させる

A.細菌によって形成されたBiofilm (バイオフィルム)を除去する

6−3.ナノテクテクノロジー(UFB)による除菌

FDCは永年の除菌経験に加えて「構造生物学(Structural biology)」の研究成果(1)を技術移転し、細菌細胞壁に対して化学的、物理的方法(ナノ・テクノロジー)によって細胞壁と修復機能の破壊による除菌法を開発しました。

現在、「う歯」や歯周組織の除菌はナノ・テクテクノロジーのUFB(Ultra Fine Bubbles)を利用しています。 各タイプのUFB技術は歯や歯周組織にダメージを与えることなく、多様な細菌の細胞膜を破壊するとともに【膜応答システム】を阻害することによって修復機能を奪い除菌します。

さらに、現在、開発中の第4世代UFBTypeWは細菌間のクオラムセンシングによる集団行動を阻害させることも可能です。

UFB(ウルトラファインバブル制圧法)

100ナノメータ以下の極微小なバブルを利用して細菌を殺滅します。

 注)1ナノメートル(1E-7m)は10億分の1m

【Refference】

(1)関口純一.細菌細胞壁溶解・修飾酵素群の総合的研究.生物工学会誌.第91巻
   第2号50-72. (2013)

6−4.細菌・クオラムセンシング阻害法

細菌は、より有利な生存活動をおこなうために集団で行動致します。そのため同種の細菌間、あるいは他種の細菌間でオートインデューサー(クオルモン)による化学的コミニュケーション(クオラムセンシング)をおこなっています。1,2)

そこでFDCは細菌のクオラムセンシングを阻害させることによって細菌の連携による集団攻撃を妨害いたします。3)

注1)グラム陰性菌の多くは【AHL(N-アシル-L-ホモセリンラクトン)】類と呼ばれる物質が
  オートインデューサーとして働く

注2)ある種のハーブティーなどもクオラムセンシングの遮断効果がみられる

【Refferences】

  1. Wai-Leung Ng., Bonnie L. Bassler.Bacterial Quorum-Sensing Network Architectures. Annu.Rev.Genet. 2009.43:197-222.

  2. Mami Sato et al. Quorum sensing of gram-positive bacteria and its inhabitation.Jpn. J. Lactic Acid Bact.;Vol 21 (2), 95-106 (2010)

  3. Kumutha Priya, et al Anti-Quorum Sensing Activity of the Traditional Chinese Herb,Phyllanthus amarus.
    Sensors 2013,13,14558-14569;doi:103390/s13114558

7.FDC除菌技術の整理

――病原菌除菌(溶菌・除去)なくして治療なし――

FDC除菌法は細菌生命維持システムである「二成分情報伝達系」の体外環境の調節機能をUFBの高温、超高圧により細胞膜ならびに細胞内装置を破壊することにより死滅させます。

注)細菌構造はPDBj(Protein Data Bank Japan)、HOMD(Human Oral Micrombiome Database)から細菌のタンパク質、あるいは遺伝子構造を知ることができます。

8.FDC式除菌法の応用例

FDC式除菌例として、歯周病と難治性の根尖性歯周組織炎の症例を下記に示します。

8−1.歯周病の改善例

  • 1)症状:歯周病第2度 53才(女性)、専門医などで処置を受けるが腫れや痛みを繰り
      返し、出血も改善しないため当院に転医。
      歯周ポケット(最深部4mm)、歯の動度度(++)、出血あり。

  • 2)治療経過:FDC式の除菌技術(多段階制圧法)によって出血は消失。

  • 3)治療法:「細菌情報」に基づき最深部の歯周ポケットを除菌する。方法は最初に偏性
      嫌気性菌の生存ガス環境を制御、第二ステージでは通性嫌気性菌の細胞膜
      構造の破壊と修復機能を遮断する。(HOMD,PDBjなどを参照)
      さらに骨免疫学上の問題がなければ病的組織をレーザーの 「量子生物学
      的な機能」により回復させます。
      注)ENAP,FOPの必要性は歯肉細胞への細菌吸着密度と白血球の機能か
      ら判断します。

Photo−1
(除菌前の多量出血)

Video−1
(除菌前の活発な細菌状態)

Photo−2(除菌後は出血消失)

Video−2(除菌により細菌は溶菌、死滅)

8−2.難治性根尖性歯周組織炎の改善例

1) 症状と初診

31才、女性 左上顎の前歯部に痛みや腫れを繰り返すため転医。既往歴なし。3医院で治療をうけるが症状が改善せず、昨晩は痛みで眠れなかったため来院 根管拡大は適切に行なわれているが、X線所見では歯根膜の肥大を認め、打診反応は垂直(++)、水平(+)、うつの症状ならびに既往歴はない。

2)細菌所見ならびに治療経過

最初の「細菌情報」では根管内の生存菌は少量、しかし、この程度の細菌量では
痛みや腫れは生じない。根管内に一次液を注入後、精密に超音波処理を実施すると
一部の壁面から大量の細菌を検出(Video−3)。
これらを除菌すること(Video−4)により、当然、症状は消失。

3) 「細菌情報」の種類」

位相差顕微鏡で観察すべき「細菌情報」は下記の6項目である。
@ガス環境、APh、B形態、Cサイズ、D活動性、E細菌の総量
注)歯周病においても同様

4) 「細菌情報」の活用法

これら6項目の組み合わせから、どのような症状が生じるのか知り、逆に、病巣に存在するに【細菌スペクトル】から炎症の状態を想定する。
注)炎症は細菌群の力だけでなく、免疫力とのベクトルによって症状に差が生じる。しかし、炎症エリアの免疫パラメータを考慮すれば、上記、理論は臨床実務上成立する。

5) 根管内の【細菌情報】

5.1 根管内の「細菌情報」は第3【細菌スペクトル】を示す
5.2 FDC式細菌スクリーニング検査により残存菌に歯科用薬剤耐性菌を認める。

6)根管内の除菌と治療効果

「細菌情報」から【第3細菌スペクトル】(Video−3)が判明する。これらの標的菌群に対応する除菌技術を適用することにより除菌(溶菌・除去)(Video−4)可能になる。 当然であるが原因の病原菌がなくなれば症状は急速に消失する。
注)根管孔外に病原菌が大量に存在する場合は、この方法では限界があり適切な抗菌剤が必要。

Video−3
(根管壁から大量の細菌を検出)
第3細菌スペクトルを示す

Video−4
(除菌後の根管内)

このように活動性の高い細菌群が
存在する限り症状は改善しない

難治性治療の場合は位相差顕微鏡検査だけでなく、グラム染色検査や
細菌培養検査(選択培地を含む)も実施致します。

9.除菌の判定

臨床実務的な除菌判定は主に位相差顕微鏡検査によっておこないます。運動停止ではなく、確実な細菌の細胞膜破壊状態(溶菌)を基準します。

注)運動を停止していても死滅しているとは限らず短時間でダメージを修復する場合がある。

また、歯科薬剤耐性菌や抗菌剤耐性菌、あるいは強アルカリ菌(pH9.5以上)などは一度の除菌では困難です。そこで、生残菌群の種類や特性から適切な除菌法を選び再度実施します。

9−1.位相差顕微鏡検査による病原菌除菌の判定

除菌の判定は主に位相差顕微鏡検査によって細菌細胞壁の破壊状態、によって判定致します。

【Video−5】は除菌前の根管内に存在する細菌です。 位相差顕微鏡検査によって多種多様な細菌の活動が観察されます。
【Video−6】は除菌後の細菌の状態です。(溶菌)状態の細胞膜から大量のプラスマが流出しています。

このように【細菌学的根拠】に基づいた治療とは「病原菌除菌行為を実施する」だけでなく、位相差顕微鏡検査によって「制圧(溶菌)状態確認」の手順を経ることによって成立致します。

Video−5
通法による根管の状態

Video−6
除菌後(細菌は溶菌状態)

9−2.DNA検査(PCRinveder法)による判定法

1)DNA検査の長所

DNA検査は病巣部の細菌の種類と種類別の細菌数を定量的に知ることができます。そのため病原菌除菌前、後の検査値を比較することで客観的に制圧効果を判定することが可能になります。

2)制圧判定におけるDNA検査の問題点

しかし、実戦的な位相差顕微鏡検査と比較してスタティック(静的)なDNA検査を臨床の現場に導入するためには以下に述べる多くの問題点があります。

  1. 中程度以上の歯周病の場合、広範囲にわたる歯周ポケットの「細菌情報」が必要になり保険適用されないことによる患者さまの経済的な負担が増加します。一方、1歯周ポケットのみのDNA検査、あるいは唾液によって歯周病全体を診断するような治療方針は科学的な臨床として問題があります。

  2. 治療中にライブの観察ができないためにタイムリーに制圧手段を選択できない。

  3. 死菌、生菌の区別ができないこと。

  4. 細菌の活動性や集団化を観察できないこと。

  5. 難症例では菌種がDNA検査で特定できてもP,g菌のように19タイプが存在する場合、
    16SrRNA検査による遺伝子解析が可能でなければ正確な制圧を行なうことは困難です。
    4−4.P.g菌は1種ではない

そこで、FDCは14年間の位相差顕微鏡データと10年間のDNA検査の使用経験から特別な症例に限り病原菌除菌前、後の検査値を比較し、制圧の効果判定をしています。日常臨床の制圧の効果判定は位相差顕微鏡検査で行ない、特に菌の種別毎の定量化が必要な場合に限りDNA検査で確認します。

9−3.DNA検査法による判定の症例

Table-1. 【制圧後のDNA検査結果】

【症例1】
32才男性 歯周病 第2度 出血(中程度)、検体採取部位:左上顎第2大臼歯、歯周ポケット5mm 制圧前(Video−9)と比較すると(Table-1)の検査値にみられるように
ターゲット(標的)細菌5菌種はすべて完全に制圧されている。

注) (Table-1)にT.d菌は記載されていないが位相差顕微鏡検査によって制圧後の溶菌を確認済、また検査表項目以外の細菌も制圧

Video−9.
【制圧前の位相差顕微鏡検査】
T.d.菌や移動性桿菌だけでなく、
他の細菌も多数存在し活動的

Table-1.
【制圧後のDNA検査結果】
制圧前のT.d菌や移動性桿菌
だけでなく他の多数の細菌も消失

7.FDC式病原菌除菌の最終目的

FDCは病原菌除菌法によりむし歯や歯周病の治療成績を向上させると共に慢性化や重症化を防ぐことが可能になっています。また、この病原菌除菌技術の導入により、患者さんの切開や手術、あるいは抗菌剤の投薬を減少させるなどの低侵襲性治療をめざしています。