FDC Now

・ウルトラ・ファインバブル(UFB)による除菌法運用開始

ご挨拶を更新。

9.医療情報システム

9−1.はじめに

医療情報システムはFDCの中枢を支えるコアテクノロジーの一つです。1970年代からシステム開発を行ない日本の歯科情報システムの先駆的な役割を果たし、現代の歯科医院のレセプトシステムの原型も1976年FDCと日本電信電話公社(現NTT)・近畿データ通信局との共同開発によって開発しています。またオンライン予約システムの稼働にも成功しています。

FDCでは現在も新しいシステム開発によって数多くのテクニカル・ノウハウが蓄積されています。

またFDCの医療情報システムの技術力は国内だけでなくWHO(世界保健機関)の医療情報部ならびに歯科部においても高い評価を戴きました。現在、FDCの診療に使用されています医療情報システムはこれらの研究成果の一部が運用されています。

さて、従来、歯科診療は手技が大きな役割を果たしているため永年にわたって技能と経験主義に偏る思考が強く、一般的な臨床医は科学方法論に基づいた論理的な思考が苦手なように感じます。例えば診断論理においても論理的構築が十分でなく、また治療理論についても仮説である以上、治療法と治療結果に矛盾が生じる場合は速やかに診断論理の見直しや仮説の検証作業をすることは科学者としては自明のことです。

従来の経験則と断片的な知識の積み上げに頼る方法だけでは臨床において「合成の誤謬」が繰返され、千変万化する症状や時として治療法が見あたらない症例に遭遇すると行き詰まり、ついに臨床とはそういうもの、と諦観の境地になりがちです。しかし、これでは臨床家としての責任放棄につながり臨床技術も停滞してしまいます。臨床技術の進歩は患者さんに生じた困難な症例を解決することによってのみ可能となります。多様な要因によって複雑化している病状を科学方法論によって解き明かそうとするとき、具体的な解決策へと導く有力なツールが医療情報システムです。

歯科医院にコンピュータを設置し、保険請求業務の省力化をはかることが医療情報システムの目的ではありません。すでに述べましたようにFDCの医療情報システムは診療の質的向上と診療技術の問題点の発見や解決のツールとして役立たせることを目的としています。さらに臨床支援システムの研究開発だけでなく患者さんの理解を深めるための診療情報の共有化や遠距離の患者さんに対する遠隔支援も包括されています。

9−2.診療は大量の情報を発生させる

歯科診療も一般の医科と同様に検査や処置、あるいは手術、投薬など関する診療情報が大量に発生いたします。その内容は病歴・藥歴情報や医療画像、細菌動画像、あるいは患者さんのバイタルサイン記録や筋電図、さらには義歯装着後の発音周波数解析にいたる多種多様な情報です。また、これらの診療情報は病歴の文字や数字に始まり、様々なデジタル医療画像や細菌の動画、さらに医用電子機器によって計測されたデジタル信号にいたる多様な形態で存在します。

9−3.医療情報システムは診療に役立つ機能が装備されていること

歯科医院が高度で信頼性の高い臨床能力を発揮していくためには、これらの大量の情報を迅速に診療に反映させる高レベルの情報処理技術が必要になります。ただ、現在の保険請求システム程度では不十分です。一例を挙げれば医療情報システムとして基本的な機能である患者さんに関する永年の診療情報や他科の藥歴情報などを迅速に検索できず、また、【むし歯】や【歯周病】などの感染症治療に欠かせない細菌情報や動画も同様に検索することができないからです。

9−4.臨床能力は医療情報システムのレベルによって決まる

このような多様で複雑な臨床目的を果たすためには「臨床ノウハウが組み込まれたシステム設計」に基づく高機能、高性能の統合化された医療情報システムを装備している必要があります。現代の歯科医院の臨床能力は臨床支援と共にソリューションシステムを有する高度な情報システムを、いかに効率的に利用できるかによって決まるといっても過言ではありません。

しかし、このように多機能で高度な情報システムを安定的に運用するためにはコンピュータ機器のメインテナンスが必要です。そのためFDCでは毎週1回、定期的に専属技術者によるシステム・メインテナンスを実施しています。(Photo−1)

Photo―1.医療情報システム (マシン定期整備)

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9−5.歯科臨床は「感覚知」・「経験知」から「判断知」の時代へ

  • 1)切削や手術の技能を磨くだけでは治療成績は向上しない

    歯の治療でなぜ、そのように大量の情報が発生するのかを歯の切削例で説明しましょう。歯の切削行為は材木や金属の切削する場合とまったく異なっています。歯や歯周組織は身体の一部であり24時間生命活動をおこなっている以上、常に心身からの影響をうける存在であるということです。つまり、歯や歯周組織は身体の末端組織と同様に脳組織や諸臓器の支配下にあります。例え、一本の歯を切削する場合であっても歯と心身との相互間に波及する影響を考慮する慎重さが(情報処理)必要です。

    また、歯の構造についても外観は良く似ていても構造の差違だけでなく中に存在する歯髄の大きさや、走行にずいぶん差が見られます。そのため麻酔を打って痛くないからとワンパターンの削り方をすれば麻酔がさめてから様々なトラブルを生じます。テクニック向上の努力はかかせないものですが(情報処理)の重要性を認識しないテクニックではいくら切削経験を積んでも治療成績の向上にはつながらないでしょう。

  • 2)指先「感覚知」と経験「経験知」だけのテクニックには限界がある
  • 歯の切削や手術中は行為に伴って発生する情報処理の大切さを述べました。しかし、それ以前に重要なことは効率性を追求するあまり定型的に手技を開始するのではなく、その前に合理的に考える習慣が必要です。まず、施術の目的、次に今、このテクニックが使用できる状況か、否かを客観的に判断する能力を養う必要があります。テクニックはいつも同じとばかりに客観的な判断をせずに従来の指先「感覚知」と経験「経験知」だけでは治療結果にバラツキが生じ、まして新技術の下で高度な治療を行なうことは困難です。

  • 3)信頼性の高いテクニックは「判断知」によって行なわれる
  • 治療にバラツキが生じ、新技術への対応ができないのは今まで経験したことのない「未知の情報」を「感覚知」「経験知」だけの知識量では検出できなかったからです。そのため大量の診療情報を収集するだけでなく合理的な情報処理技術と、その結果を統合的に判断する新しい能力が必要になります。この能力が「判断知」であり、この知的判断プロセスを経ていないテクニックの使用は思い込みによる治療上のトラブルを慢性的に生じさせ、問題点に気づくことも困難です。このように上手なテクニックであっても「判断知」基づいてこそ信頼性の高い技能といえます。

  • 4)革新的テクノロジーは「臨床パラダイム」の転換によって実現する
  • それでは臨床全体に話をもどしましょう。FDCは患者さんの多様なニーズに応え、診療の質的向上や効率性の追求といった多様で複雑な課題を解決するためには新しい臨床思想である「判断知」を中心とした「臨床パラダイム」によって臨床をおこなっています。多様なニーズに応えるためには多くの情報から迅速に最適解を選択しなければなりません。また、診療の高度化をはかろうとすれば現代のドラスティックに発展する生物工学技術やクリニカル・エンジニアリング(臨床工学)を臨床に技術移転する知的基盤が必要になります。FDCは1974年から今日まで新しい臨床パラダイムにそった革新的なコアテクノロジーの導入と開発によって治療技術を向上させています。

    近代的な臨床能力は「術者」と「診療支援システム」の総和によって決定されると考えています。FDCの高度な治療はコアテクノロジーを背景とする「マン・マシンシステム」によって実現しています。現在、多くの患者さんが求めている臨床技術の高度化、あるいは信頼性の向上は「判断知」に基づいた臨床支援技術の実現によってはじめて担保されます。

9−6.「判断知」を支援する医療情報システム

さて、診療中に「判断知」に基づいてと、いっても多忙な診療中に大量の診療情報を高速で情報処理することはベテランの歯科医であっても限界があります。その上、術中に必要な情報も人手や時間的な制約のために術者に十分に提示されない場合もあります。その結果、重要な診療情報が治療に十分フィードバックされないため「診療の質的向上」をお題目のように唱えていても患者さんに対する診療の質は何も変わりません。そこで、このような制約条件下でも「判断知」を可能する強力なツールが情報科学とコンピュータシステムによって構成された「医療情報システム」です。

さて、これから医療情報システムについて具体的に述べていきますが専門的になりますので少し整理をしておきます。内容 は手技を中心とする将来「歯科用ロボット技術」に必要な「身体情報処理」「判断知」を支援する「技術情報処理」の2種類 の技術です。それでは臨床における情報処理の在り方について以下、述べていきたいと思います。