4.2 細菌

1)「う歯」、歯周病治療には一般論的な細菌知識は通用しない

多種多様な細菌によって成立する「う歯」や歯周病の治療には医科系で適用される単一菌種に対する「静的」な細菌学的知識によるアプローチだけでは困難です。

なぜなら、これらの病源微生物は口腔内の諸環境はいうに及ばず、食事の在り方や年令、さらには現在服用中の薬や、免疫能力などの個人差などによって【病巣部に存在する種類や生態は大きく変動】するからです。

つまり、病巣部の細菌事象は安定に見えていても常に【順定常状態】にあるといえます。

このように歯科感染症の治療対象となる細菌は種類が多いだけにとどまらず多様性にも富んでいます。また、口腔内環境や組織構造、さらに組織免疫系だけでなく諸臓器の変化などによる影響もあり、そのうえ症状についても生物特有の非線形な応答をするために単純な論理による治療理論や治療法では解決困難です。「う歯」、歯周病の治療は「複雑系システム」として取組む必要があります。しかし、臨床は概念ではなく実務ですので、FDCでは「細菌情報」を中心に話を進めていきます。

注) 例えば歯周病(P2)や「う歯(C2)」の病巣部を細菌検査(DNA検査も含む)致しますと存在する細菌の種類や細菌数だけでなく活動性も大きく異なつていることがわかります。

病巣部細菌群の千変万化の実態は12年間にわたる大量の位相差顕微鏡検査データから判明しています。

2)主役の細菌は大量に存在し、活動性の高い種類

病巣には多種多様の細菌が存在します。しかし、最も数多く存在し、活動的な細菌が主役になります。なぜなら大量に増殖し、活動(代謝・分裂、移動)するためには多大なエネルギーが必要になります。そうすると、何をエネルギー源にするのか? 

 「う歯」の深部、あるいは歯周ポケットの深部には、もはや食べかすが簡単に到達しない領域です。当然、「う歯」の細菌であれば象牙質、歯周病菌の場合は歯周組織を破壊し、これらの組織成分からエネルギーを獲得します。その結果、これらの細菌の死骸や代謝産物も大量に発生しますので当然、組織に与えるダメージは強いと考えられます。

3)除菌の【標的細菌】は主役の細菌

前述のように病巣部の細菌が増殖、活動的になりますと、一段と組織から大量のエネルギーを奪い取る必要が生じるために広範囲(深さも含めて)に象牙質や歯周組織を破壊します。

当然、細菌は組織の破壊だけでなく細菌毒や炎症性産物を広範囲に拡散させるため激しい痛みや腫れを宿主(人間)与えます。 そこで、FDCは、このような主役細菌【標的細菌】を優先的に菌種の特性に応じた方法を選択して除菌します。